長岡花火を観覧した。コロナ明けの2021年から5年ぶり、@テンネンパーマ さんのご厚意により、地元民向けます席で花火が落ちてきそうな距離感で圧倒的な迫力とズシンと来る振動、遅れてやってくる音と五感を使ってフルに体感できた。
https://flowfussy.com/events/e4c105ce697a
北国の我慢と忍耐から生まれた花火という芸術
花火は新潟県をはじめ、秋田県や長野県など北国が盛んというイメージである。日本三大花火に数えられる長岡まつり大花火、大曲全国花火競技大会、土浦全国花火競技大会の他にも、とくに新潟県内では日本最大の超四尺玉を揚げる片貝まつりや日本有数の海上花火大会ぎおん柏崎まつりなど、短い夏を彩る様々な花火大会が行なわれている。
どうして新潟県で花火が盛んなのか?花火師が忙しいのは実は冬であり、そこでどれだけの花火を制作できるかが重要となる。冬に大雪に閉ざされる新潟という地勢は、農閑期に夏の大輪を思い浮かべながらコツコツと花火玉を制作する時間をもたらしている。そして花火は先祖に対する祈りや鎮魂といった神道の祭祀的な意味合いを含んでおり、新潟をはじめとした稲作文化圏と親和性が高い。
その意味では北に行けばいくほど巨大化する北東北のねぶた/ねぷたであったり、北国の長い冬はコツコツと作業しつつ芸術性を高めていくような伝統文化がたくさんある。五所川原市の立佞武多 などは、20m以上の山車が町内を練り歩くために、信号や電線なども折り畳みできるように設計されている。内発的芸術性を短い夏の間に爆発させる、ある意味オタク的な資質が北国の人々の血液に流れている。
世を徹して踊り狂う西国の念仏文化
一方で西日本に行くと、よさこいや阿波おどり、郡上おどりのように仏教的な起源を持つ踊り文化が脈々と受け継がれている。五穀豊穣や地縁共同体の存続を願い、自らの身体を使って表現する盆踊りは各地で細分化される形で進化し、この日だけは無礼講だったり夫婦関係を無視した乱交が行なわれるといったまさに乱痴気騒ぎだった。
この盆踊りは現代には最新音楽文化や別の地域の伝統と融合して新たな地域文化形成が現在進行形で起こっている。北海道では高知発祥のよさこい祭りと北海道民謡のソーラン節が融合したYOSAKOIソーラン が開催され、中野区ではDJによって選曲されたアニソンや海外楽曲に乗って踊るBON-DANCE が開催されている。身体一つで参加でき、ノリや調和で一体感が生まれる場は、まさに陽キャの祭典として今後も進化していくだろう。
花火も踊りも貪欲に取り入れてきた日本各地の祭りたち
日本各地には、この花火も盆踊りもどっちも取り入れた祭りがあちこちで開催されている。オタクも陽キャも自らの資質を活かしながら、このハレの日のひと夏の体験価値を最大化させるためにケの毎日を過ごしている。この祭りに対する神仏習合の文化形成プロセスを研究してみるのも面白いだろうし、そこに至るまでにコストや労力をかけてイベントを成立させる地元民の情熱の根源がどこにあるのかは資本主義では測れないだろう。
もちろん、この祭りに対しても経済性が見え隠れする。長岡大花火の場合、花火開催にかかる総コストは約13億円で、そこに対する有料席収入は8億円程度となっている。地元企業を中心としたスポンサーや行政からの補助金や寄付金によってその差分は埋められているが、これ以上有料席を増やすと地元の子どもたちが気軽に河川敷で観るといった風物詩が失われることにもなりかねない。
昨今の火薬や輸送費、警備費など様々なコストがインフレによって高騰する中で、いかにイベントを継続させるかという点ではマネタイズは不可欠である。とくに近年では、一部の内容をドローンショーに切り替える といった形で花火とテクノロジーの融合が進められている。世界でも有数のお祭り好きな日本というコンテンツは、インバウンド客や世界に対する文化輸出という観点でもより高度に研ぎ澄まされていくのだろう。



