サラブレッド―速く走ることを目指して人間によって改良が重ねられた経済動物であり、主な用途は競馬が大多数である。GIレースを何勝もするような名馬の裏には、何千頭もの馬たちが生まれ、知らないうちに消えていく。そんな競馬界のタブーとも言われる実態に切り込んだ内容となっている。
現在、日本国内で誕生するサラブレッドは約8,000頭/年であり、競走馬としてデビューするのが約5,000頭、そこから熾烈な勝ち残りを経てだいたい5歳になるまでにその運命が決まる。そこで約4,000頭/年の馬が“行方不明”となっており、恐らくは食肉として処理されている。
一方で犬や猫といった愛玩動物とは違い、あくまで経済動物として人間の都合によって生み出された競走馬は、500kgもの巨体と30年程度生きる長寿、月10万円程度の預託料がかかるため、何も経済価値を生まない状態で生かし続けるのは難しい。感情論だけでは解決しない構造が横たわっているのだ。
もちろん世の中の価値観が変化するにしたがって、この競走馬を引退したサラブレッドを受け容れようという社会も広がってきている。従来は乗馬クラブ程度しか行き先がなかったが、ホースセラピーや養老牧場といった形での居場所が僅かながら増えてきている動きもある。
競走馬の生涯では生まれて数年の現役時代には億単位のお金が動く一方で、より長い余生に対する数十万円の費用が払われない価値の非対称性が大きいことが課題であり、引退馬も稼ぐためのビジネスモデルが気鋭の起業家たちによって考案され始めているのは希望である。またホーストラストのように半野生状態での昼夜放牧など、生活コスト自体を下げて月3万円程度で生かすような方法も取り組まれ始めており、競馬ファンをはじめとした人間たちがそこに資金を還流する仕組みは作れるのではないかと感じた。
![[書評]サラブレッドはどこへ行くのか](https://image.osiro.it/pass/main_images/536378/images/original/81iNpz89PUL._SL1500__%281%29.jpg?1765162549)

2025/12/08 11:55
