視野を広くしよう―学校や職場などで教えられる、絶対的に正しいアドバイスだ。でも視野を広くすると、海外の終わらない戦争やテロ、環境問題、ジェンダーといった様々な自分だけでは解決できない社会課題に頭が占有されて無力感に苛まれる。
現代人にとっての“推し活”とは、むしろ視野をとことん狭めて推しと自分の境界を曖昧にし、その挙動に一喜一憂することで心の平穏を保つ行動になっている。それは宗教的であり、信徒は教義にしたがって連帯しSNSを中心とした布教活動に勤しんでいく。
しかし現実社会における推し活とは、むしろ深く熱狂する1万人を生み出して経済活動を極大化させるマーケティングであり、それらはアメリカでの宗教右派によるMAGAのような活動に近似している。実際に海外では、教会を中心とした信徒=有権者獲得の手法がチャーチ・マーケティングとして確立しており、数百数千規模の信徒を集める場所はメガチャーチと呼ばれる。
推し活にハマることは幸せなのか。もはや他人のものさしでは測れない次元にいる人たちに対して、それはナンセンスな質問であろう。神が死んだ現代において、自らの神を見出す者たちに、無宗教な私たちは嫌悪感とともに少しの羨望を持って遠巻きに見ているのだ。

2025/11/22 11:51
