トランプ大統領は、原因ではなく結果なのだ。トランプ関税やウクライナ・イスラエル等への外交姿勢、マイノリティに対する差別やヘイトスピーチなど、世界中に大混乱をもたらすトランプ政権が誕生した歴史的経緯を紐解いた内容となっている。

いまのアメリカ合衆国では、絶望的なまでの経済的格差が党派による分断を深くしている。単なる泡沫候補だったトランプは、民主党から共和党に鞍替えして白人労働者の中間層の代弁者となっていく。それまでの共和党は、WASPに代表される東海岸の資本家によって支えられてきた保守政党であったが、産業構造が変わって金融やITが台頭してくる中で、党勢が脅かされていく。

一方の民主党は、クリントン・オバマという環境や人種差別といった部分での政治的正しさ(ポリティカル・コレクトネス)を重視しながらも、その実は金融業界におもねった政策を採ってきた政権によって、リーマン・ショックやイラク・アフガン戦争の泥沼化といった国民に負担を強いる状況が続いてきた。庶民はインフレや増税、社会保障不安に悩まされ、少数の金持ちがこの国の方向を決めるやり方に嫌気が差していたのだった。

そこに現れたのがトランプであり、従来の(資本家向け保守政党=共和党)・(労働者層向けリベラル政党=民主党)という区分けは完全に逆転していく。ポリコレ糞食らえと暴言を吐き、海外の戦争に軍隊や金を出すのではなく国内に投資して移民を排斥しろといったポピュリズムによって白人労働者を岩盤支持層としてさらに無党派層を動員していった。このトランプという怪物を生み出したMAGAという存在こそが、アメリカ第一主義の原動力となっている。

ベストセラー『ヒルビリー・エレジー』を記したヴァンス副大統領や、白人貧困層から史上最年少で入閣したレヴィット報道官など、トランプに続く人材が現れてきている。そしてアメリカ合衆国という世界秩序を制してきた存在が内向きになる時代こそ、パクス・アメリカーナの終焉が近づいていると考えるべきであろう。