「強くて弱い国」アメリカ、海への野心を捨てきれない大陸国家のロシアと中国、そして海洋国家としての日本の立ち位置など地政学的にみた国際関係で非常に参考になる良書。ウクライナ戦争や台湾有事など、現在の国際情勢における課題も地政学で紐解くことで必然的であることが理解できる。
現在の国際秩序はアメリカ合衆国を中心に形成されていることは疑いの余地がない。世界の警察を自認し、様々な国際紛争に介入しながらもその勝率は決して高くないアメリカという国は、海洋国家なので防御には強いが攻撃には弱いのだ。そして領土拡張の野心を隠さないロシアと中国という大国は、歴史的にも地理的にも平野部から他国に侵略され続けてきた恐怖があり、緩衝地帯としての周辺国を影響下に置く必然に迫られる。
そしてロシアや中国の周辺国である日本は、イギリスやアメリカといった海洋国家と連携してこの大陸国家が進出してくることを食い止める宿命を持つ。そのため、大陸国家の入口となる朝鮮半島は緩衝地帯になりやすく、日清/日露/太平洋/朝鮮と各戦争の戦場となった。地政学的に考えれば北方領土が返還される可能性は低く、また沖縄に米軍基地は駐留し続けるのだと言える。
地政学という観点から、感情を排して地理条件のみでこれほどまでに明瞭な説明ができるのはとても面白いし、政治環境やエネルギー・食糧安全保障はあくまで副次的要素なのだと理解できる。トランプ大統領の登場で世界の警察からも降りようとしているアメリカであるが、そうすると海洋国家としての利益が大陸国家によって侵食されるリスクを内包している。また石油・化石燃料依存は海洋国家たるアメリカやイギリスにとっては有利であるが、ドイツやフランスが再生可能エネルギーに熱心な理由も間接的に理解できた。
![[書評]あの国の本当の思惑を見抜く 地政学](https://image.osiro.it/pass/main_images/540642/images/original/61LKiQlY2AL._SL1415_.jpg?1766457209)

2025/12/23 11:33
